特集「食」を考える
今、食べるものがどこで作られどこから来るかなど、食に対する関心が高まっています。豊かな水と緑に恵まれた環境のなかで、町の農作物はどのように生産され、食生活の学習が進められているのか、食をめぐる現場を訪ねてみました。
食生活を考えよう
偏った食事による生活習慣病の増加、肥満や過度のダイエットによる体の異常、さらに食品の安全性に対する信頼低下、輸入食品の異物混入事件など食をめぐるさまざまな問題が指摘されています。
子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、健全な心と身体を培い、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が大切です。
食事は生活の基本
食べると言う行為は人間にとって基本ですが、親子の関係についても基本となるのではないでしょうか。最近、父親が忙しい家庭では母親と子どもだけで夕食をすませたり、包丁も握らずお店の惣菜だけが並ぶ食卓もあると聞きます。ときには子どもだけがテレビを見ながら食事をする「孤食」などという状況まで生まれてきてます。
平成17年に食育基本法が制定されました。食育基本法では「国民一人ひとりが『食』について改めて意識を高め、自然の恩恵や『食』に関わる人々のさまざまな活動への感謝の念や理解を深めることが大切である。心身の健康を増進する健全な食生活を実践するために、今こそ、家庭、学校、保育所、地域などを中心に、国民運動として、食育の推進に取り組んでいくことが、のわれわれに課せられている課題」とあります。
地域とのかかわり
町内では食生活改善推進協議会が教育機関との協同により食育運動を推進するなど徐々に広がりを見せています。一方生産者として、安全な作物を作るために日々努力しているたくさんの農家の方がいます。
食育活動や町内で生産される農作物の新しいニーズや販路を生み出し、拡充していくためには、町で産出する豊富な農作物を有効に活用できるような組織作りと地元の新鮮な農産物を地元で食べることの出来るシステムの整備が必要でしょう。
町内にある安全安心なおいしい農作物の需要と供給の細い糸をつなぎ合わせることによって、新たな流通の構築も可能となるのではないでしょうか。
食材の匠
稲作
コメ作りに終わりなし 佐藤薫さん (嶋田)
3haに「あきたこまち」を作付けして減農薬、無科学肥料を使用したコメ作りをしています。出来たコメは全量を名古屋の会社に出荷しています。毎年12月にはキャンペーンで売り込みにも出かけます。
特別栽培米研究会は発足して約20年になりました。総出荷数は約二千俵ぐらいになります。初めの頃は手作業による堆肥の散布作業なども行いました。近くに堆肥センターが完成しだいぶ楽になりました。苗も同等な栽培方法をしていることから、普通より生育はゆっくりしているので田植えは少し遅めになります。
この栽培方法ではコストが普通のコメ作りの2倍はかかりますし、収量も10aあたり8〜9俵と少ないです。コメの価格は下がっていますが、特別栽培米として付加価値があることから、ぎりぎりの線で経営がなりたっているのが現状です。
現在、会員は15名です。作付けするさいにいろいろな決まりごとあることから、簡単に誰でも会員にはなれません。審査のうえ同意を得ることが必要になります。
特別栽培米は20年前、食の指向を予想して進めた事業であり、全量完売できるということは、今、安全安心の農作物を求める消費者の要求とマッチした結果だと思います。
使用可能な農薬が制限されており、管理記録も残すなど厳しい栽培ですが、今後もより安全でおいしいコメ作りを目指していきます。
養豚
おいしいく安全な食べ物を生産する喜び。姉妹で畜産経営をこなす (有)スガワラピッグファーム
加藤美紀子さん(姉、左)菅原紀代子さん(妹、右)

現在母豚約三百三十頭の一貫経営で美味豚を生産しています。出産から始まり約半年ほどかけて体重が百十kgになるまで生育し出荷します。
畜産農家は休みがないと思われていますが、法人化していることから朝8時から5時まで働く普通の会社の形態と同じです。休日は交代制で取りますが、土日は最低限度の仕事量にして出勤者を少数にしています。
養豚の仕事そのものは男性と遜色なくできるようになりましたが、会議に出席すると回りが男性だけで、お酒が入る会合とかも多いのでちょっとやりづらいかなと思うときもあります。それと仕事をしながら家事もしていますので、両立が難しいときがあります。
販売店の方でも安全で美味な精肉をもとめて激しい競争をしています。外国からの輸入食品事件がおきたことも要因のひとつですが、美味で安全な豚肉の要求が高まった結果をうけ、いち早く全農安心システムの認証制度を取り入れた経営に取り組んだ結果、平成19年10月に認定農場になりました。
世界的な穀物相場の上昇によって飼料代が高騰していることから、経営は厳しくなっています。今後も豚の成育状況や病気の状況を徹底して記録し、消費者の側に立った顔の見える安全安心なおいしい美味豚を作りたいと思っています。
就農して7年、お姉さんの美紀子さんは美郷町から通勤しており、妹さんの紀代子さんはまもなく出産とのこと、丈夫な赤ちゃんを産んでください。
野菜
この町で汗を流します 小沼泰久さん (谷地中)
高校を卒業し3年ほど埼玉県で働いたのち就農しました。子供のときから農作業を伝っていたので秋田に帰って農業をすることにはまったく不安はありませんでした。
新成地区にはオクラの栽培をしている名人の方がいましてので、お願いして一生懸命ならいました。オクラは30度ぐらいの気温で生育するので、温度管理にとても気を使います。天候の変わりやすい日に油断して、ビニールハウスの温度調整を怠り葉焼けをおこして失敗したこともあります。
オクラ栽培の魅力は、低コストで栽培し高い収入性があるところだと思います。販売金額の精算も小刻みにあり、未収入の期間が無いので安心です。それに、種まきから収穫まで全て自分の手がかかっているので責任感と達成感はひとしおです。
夏場は稼ぎ時ですから繁忙期で全く休みがありません。その分を冬場の休日に当てています。忙しい中でも時間を見つけ海や川で釣りをして気分転換をしています。
オクラを収穫した後のハウスには花卉を栽培し、その後、フクタチや小松菜を出来る限り農薬未使用で栽培します。出荷後の残ったものを食べていますが、考えてみれば減農薬の贅沢な野菜を食べていることになりますね。
オクラ栽培のハウスも町の「農業夢プラン応援事業」を利用することができ助かりました。今後はもう2棟を増築し収量を上げて売上を伸ばしていきたいです。そしてオクラだけでなく花卉の栽培についても学ぶことがたくさんあるので、頑張って自分の糧にしたいと思います。
こだわりのキュウリづくり 原田正さん(南元西)
水稲3haとキュウリ10aの複合経営です。キュウリ作りはいまでいう直販の始まりで、全農の方と協議し何か目玉となる作物はないかと検討したところ四川キュウリはイボがあって香りがよくパリッとした食感が特徴があることからこれで売り出していこうと栽培を始めました。肥料をどの段階でどれくらい投入するか、追肥の調整がポイントです。あとはキュウリにも元気の素が必要で焼酎を散布し、よりおいしいキュウリ作りを目指しています。さらに接木の苗を使用して連作障害がおきないようにしています。
食の安全から生育記録に散布月日、散布農薬量など記録し管理しています。市場に出る前には残留検査を実施しています。
四川キュウリは病気に弱く施肥の量やタイミングなどで栽培が難しいです。収量もあまり多くは無いので10年たって気がついたら栽培農家は自分だけになってしまいました。
自分なりにこだわりのキュウリ作りの結果でしょうか、今年は関東の大手デパートが直販に応じてくれたので、ある程度の安定した収入は見込めると思っています。
元西小学校の児童の方々と一緒に自分の畑で野菜を栽培しています。自分たちで植えた作物を収穫し給食のときに食べるのは格別のようです。こういうことは農作地帯だから出来る楽しい作業だと思います。
すべてボランティアの手弁当で食育活動をしている榎本さんからお話を伺いました。
生活の基本は食育から 食生活改善推進協議会 榎本鈴子会長
これほど「食育」が話題になるとは思いませんでしたが、会の取り組みとしては早いほうだと思います。学校の授業の一環として食育をテーマにした内容の学習は、全県的にみても先進的な取り組みだと思います。営利が目的の活動ではなく、食に従事するものの使命として食育活動に力を入れてきました。
活動する場合は学校の意見を参考に、先生方と内容を協議のうえ、企画しました。学習を開催するときはこちらが作成した資料や食材なども持ちこんで実施してきました。学習会には父兄の方も参加していだだくようになり継続していくことが、この会の進展につながるのではないでしょうか。1回だけでなく回を重ねた研修では子どもたちと顔見知りになり、交流を通じて現代の食事情が伝わってくる貴重な経験もさせていただきました。
講演に呼ばれて他の市町村に行きますと「食」に関しての関心が高まっており、食育活動が全県的な広がりを見せていることを感じます。
行政主体の取り組みでなく独自のボランティア活動が見とめられたのでしょか、今年度は食育活動に町の予算がつきました。
安全な食材を求めて地産地消が見直されていますので、町の生産者の方や各農業関係機関、直売所などの連携を図り食育活動のネットワークを拡充できればと考えています。
私自身は食べ物についての好奇心が旺盛で、とても食いしんぼうだと思います。それが食育活動のエネルギーかもしれません。
今年度より学校給食センターに着任されました、栄養士の新山澄子さんに町の学校給食についてお話を伺いました。
地元の食材を最大限に利用したい 給食センター 新山澄子栄養士
今年赴任したばかりですが、羽後町は食材が非常に豊かな地域だと聞いてます。
昨年まで勤務していたところでは稲庭うどんや三関のさくらんぼ、ジュンサイなどを給食に取り入れていました。羽後町でも地元で採れる旬の農産物や食材を利用したいと考えています。
まだ、食材の購入にあたって具体的な情報が少なく、例えば山菜のミズ50kgをすぐ調理できるよう手配するにはどこへいけばいいのか。羽後牛を食べさせたいが、提供できるような価格の部位はないかなど、食材の購入にあたってどこに連絡すればいいのか情報網の整備が必要かなと思っています。9年間食べることになる学校給食には、出来るだけ新鮮なものと地元の食材を利用し、子どもたちが喜ぶ献立にしたいと考えています。
町の食育活動
食生活改善推進協議会事務局を担当しており各小・中学校で食育教室を実施した小松・瀬川栄養士との談話
食品添加物の学習で驚く子どもたち 瀬川さつき主任栄養士(左) 小松千佳子栄養士(右)
昨年度は三輪、元西、西馬音内、仙道小学校、高瀬中学校と全部で5校で食生活改善推進事業の一環として食育活動を行いました。
調理実習にあたって、火や包丁の扱いについて心配しましたが、小学生でも上手な包丁さばきで料理を完成させ、一緒に参加された保護者の方からも「子供たちがここまで出来るのか。」といった驚きの感想が多く聞かれました。
また、回を重ねていくごとに児童・生徒さんたちとも顔見知りになり、交流が深まったように感じましたし、活動に携わった食生活改善推進員(ヘルスメイト)の中には「自分の孫と同じくらいだ。」と言う方もいて、楽しく参加されていました。
子供たちの感想文を読むと、例えば、食品添加物について学ぶ授業では、実験したり具体的な事例などを聞くことで、その怖さを再認識したようでしたし、その他のアンケートの結果からも、こちらが思っている以上に深い理解を示していると思います。それだけ中身の濃い活動内容だったのではないでしょうか。
今年度は教育委員会に食育についての予算が置かれました。食生活改善推進協議会と連携をとり、食べることの大切さや楽しさを、子供たち、そして保護者のみなさんと一緒に学び、考える機会をさらに増やしていくことが出来るのではないかと考えています。
伝統的食文化の衰退
食育に関しての誤った知識という記事がありました。
・「落としぶた」というのはどんな豚肉か。
・玉ネギを使いたいが、どこまで皮を剥いても実が出てこない。不良品ではないか。
・ダイエットしてるからといって食事がお菓子とケーキという若い女性
笑うに笑えないような食に関しての知識を持つ人々が多くなっているとあります。
アンケートの中では端午の節句に食べるもの(かしわ餅)と聞かれてしっているのは半数と言う結果もありました。日本人が1年間に消費する肉類は44年間で約5倍になり、また、20代の4人に1人は朝食を食べていないとの調査結果もあります。
町の教育委員会では、食育教育の運営組織を立ち上げる会議を5月下旬に開催し、児童生徒の食育についての指針と行動を検討していく計画です。
また、県では地元産の新鮮な食材の普及のため「あきた産デー」の日をもうけるなど地産地消の活動が広がりをみせています。政府では、来年度より消費者重視の政策として消費者にわかりやすい表示・規制体系の構築や目指し「消費者庁」が創設されます。
食卓から何が消えて、何が口に入るようになったのか、何を食べなくなって、何が食べられるようになったのか、日々の食事を時々ふりかえってみるのも大切なことではないでしょうか。この町で生産される作物をもう一度見なおしてみませんか?